広島市中区本川町の築39年・空室9室だったビル

築39年、15室のうち9室が空室。エレベーターなし、古いワンルーム——それでも、広島市中心部のビルを7,600万円で取得し、総額約1億円をかけて再生する判断をしたのはなぜでしょうか。

株式会社グローバルリゾートレジデンスのYouTubeには、購入前の現地調査から改装後までが残っています。完成した建物は現在、アパートメントホテル「グローバルリゾートHONKAWA」として稼働しています。本記事では、この実例をもとに、築古ビルを再生するときに見るべき7つの判断基準を整理します。

この事例を30秒で

  • 購入時:1984年築・4階建て・全15室、うち9室が空室
  • 投資規模:購入価格7,600万円、動画内の想定総額は約1億円
  • 再生後:空室9室を宿泊用に改装し、2024年3月に全15室のアパートメントホテルとして開業
  • ポイント:弱かった「賃貸用途」を、立地が生きる「宿泊用途」へ組み替えた

購入前の現地調査で見えていたこと

物件は広島市中区本川町。動画では、平和記念公園や市中心部へ歩ける立地、4階建て15室という規模、取得時に9室が空いていた状況が紹介されています。1室はおよそ5.5〜6.5畳のワンルームで、エレベーターはありません。

購入前の室内・外壁・屋上を専門家と確認する様子

賃貸住宅として見ると、狭さや古さ、階段移動は弱点です。一方、観光・ビジネスの短期滞在なら、中心部に泊まれて、キッチンや洗濯機が使えることが価値になります。再生の起点は「直せばきれいになるか」ではなく、用途を変えたときに立地と建物が噛み合うかでした。

総額1億円の再生を決めた7つの判断基準

1.空室の原因と、別用途で選ばれる理由を分ける

空室が多いから、立地まで悪いとは限りません。この物件は、古い間取りや設備が長期賃貸では選ばれにくい一方、原爆ドーム周辺や市中心部へ歩ける立地が宿泊需要と合いました。まず「なぜ空いているか」と「誰なら使うか」を別々に考えます。

2.購入価格ではなく、総投資額を客室数で見る

動画で示された購入価格は7,600万円。外壁・屋上防水・室内・設備・開業準備まで含めると、総額は約1億円の想定でした。安いか高いかは購入価格だけでなく、使える客室数、必要な追加工事、完成後の売上と運営費まで含めて判断します。

3.間取りより先に「その用途が可能か」を確認する

宿泊施設への転用は、用途地域、建築基準法、消防法、旅館業の構造設備基準などの確認が必要です。広島市も、既存建物を旅館業施設として使う場合は、建築確認手続きが不要なケースでも関係規定への適合が必要と案内しています。設計を固める前に、保健所・建築・消防へ図面を持って相談することが重要です。

4.「新耐震だから大丈夫」で終わらせない

この建物は1984年築で、動画では新耐震基準の時期に建てられた物件として説明されています。新耐震基準は1981年6月1日以降ですが、築年だけで安全性が自動的に決まるわけではありません。確認済証・検査済証などの書類、増改築履歴、劣化状況、ひび割れや漏水の有無を個別に確認します。

5.見た目より、止まると困る設備に先に投資する

現地調査では、屋上防水、外壁、雨漏りの跡、水回り、電気、空調などを確認しています。無人運営では、設備故障のたびにすぐ駆けつける前提にできません。壁紙だけをきれいにするのではなく、水回りや電気系統など、営業停止につながる部分を優先して更新する考え方が欠かせません。

6.全部を一度に変えず、空室から切り替える

続編では、まず空いていた9室を宿泊用に改装し、既存の賃貸入居者がいる状態と併存させています。同じ間取りをパッケージ化しておけば、退去が出た際に追加改装しやすくなります。入居者の動線・騒音・案内表示などへの配慮は必要ですが、段階的な転用は初期投資と空室リスクを調整する方法の一つです。

7.完成後の運営方法まで、工事中に決める

客室にはキッチン、洗濯機、電子レンジなどを備え、短期だけでなく長期滞在にも対応。工事中から清掃スタッフが入り、ベッドメイクの動線や備品配置を確認しています。予約、決済、本人確認、鍵の受け渡し、清掃、トラブル対応まで組み立てて初めて、建物は「営業できる宿」になります。

改装後、空室9室はどう変わったか

2024年1月公開の続編では、外観塗装、室内、水回り、家具家電の設置がほぼ完了した状態を紹介しています。空いていた9室は宿泊用に改装され、建物全体の消防設備を整え、検査と旅館業許可の最終段階へ進みました。

空室9室を宿泊用に改装したビフォー・アフター

その後、施設は「グローバルリゾートHONKAWA」として2024年3月に開業。広島市の旅館業許可施設一覧でも、本川町の対象9室が旅館・ホテル営業の許可施設として掲載されています。購入前の仮説が、改装・許可・運営までつながった実例です。

動画で分かる事実と、物件ごとに確認すること

動画・公式情報で確認できること別の物件では必ず個別確認すること
1984年築、4階建て、全15室登記、確認済証・検査済証、増改築履歴
取得時は9室が空室空室期間、退去理由、周辺賃料、宿泊需要
購入価格7,600万円、想定総額約1億円防水・外壁・配管・電気・消防・家具を含む見積もり
空室9室を宿泊用に改装用途地域、建築基準法、消防法、旅館業の要件
キッチン・洗濯機付き、セルフチェックイン運営体制、本人確認、鍵、清掃、緊急対応
2024年3月開業、許可施設一覧にも掲載想定単価・稼働率ではなく、手数料や清掃費を引いた粗利
この事例の条件を、そのまま別の建物へ当てはめることはできません。

築古ビルの購入前チェックリスト

  • 空室の原因を、立地・賃料・間取り・設備に分けたか
  • 希望用途の需要を、徒歩圏の駅・観光地・繁華街・法人需要で確認したか
  • 屋上、防水、外壁、配管、電気容量、空調、消防設備を確認したか
  • 用途地域と関係法令を、行政と専門家へ事前相談したか
  • 購入費だけでなく、開業までの総額と予備費を出したか
  • 予約・決済・本人確認・鍵・清掃・緊急対応の担当を決めたか
  • 宿泊が難しい場合の賃貸・売却など、別の出口があるか

再生で大切なのは「直す力」だけではありません

買う前に用途を考え、改装費を読み、許可を取り、完成後に集客・運営する。どこか一つだけでは、築古物件の再生は成立しません。建物の弱点を消すことと、その場所で選ばれる理由をつくることを、同時に考える必要があります。

私たちは、物件取得、改装、許可申請の補助、予約サイトの構築、集客、運営までを現場で行っています。「空室の多いアパートを売るべきか」「宿やマンスリーに変えられるか」と迷っている段階でも、売却案と再生案を並べて整理できます。


動画・関連情報

※本記事は当社YouTubeで公開した実例と、当社公式サイト・noteおよび行政の公開情報をもとに、築古ビル再生の一般的な判断ポイントを整理したものです。工事費・許可・運営条件・収益性は、地域、建物、用途、計画により異なります。購入・工事・開業前に、所管の自治体、消防署および各分野の専門家へご確認ください。

事実確認:広島市「旅館業の手続きや管理」/広島市「旅館業法に基づく許可施設一覧」/国土交通省「建築基準法に基づく耐震基準」

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